【菌床栽培レポート】株式会社 佼和テクノス(株式会社わくわくげんきのこ)|きのこと働く人の笑顔を育てる企業
こんにちは、京成ホテルミラマーレで広報を担当している「しほ」です。
今回も千葉の企業を紹介していきます!
夏休み前で仕事は正念場、外の熱気に負けじと働いていると若林総料理長からお電話が。「秋と冬に使う食材を探しに市原市にあるきのこ栽培所を見学に行くけど、
来る?」とのこと。「行きます!」即答したのでした。
前回は夏前涼しい時期の企業訪問でしたが、今回は8月の夏真っ盛りの訪問となりました。
お伺いするのは「プラント建設」をメイン事業としつつ、福祉事業にも尽力。そして新規事業として千葉県市原市できのこの菌床栽培に取り組まれている「株式会社
佼和テクノス」さん。そして、その子会社の「株式会社 わくわくげんきのこ」さんです。
きのこ栽培というと原木がぎっしりと並んでいるイメージですが「菌床栽培」とはどんなものなのでしょうか。とってもわくわくします!
ちなみに「見学する日は納豆を食べないで来てください」とのお達しがありました。実は納豆の菌はとっても強力で、きのこの菌を全滅させてしまうとのことです。
納豆好きの私ですが、今回ばかりはきのこのため前日から食べずにきました。
ホテルから南に向かって30分ほど、広い土地に幾つもの施設が見えてきました。
到着した私たちを出迎えていただけたのは菌床栽培部の大野 剛さん。大野さんの案内で施設内を見学していきます!
っとその前に「菌床栽培」とはどんなものなのか、大野さんにお聴きしました。
大野さん「木材のおがくずをさらに粉末にした『オガ粉』に栄養剤と水を加えて混ぜ固めたもの(培地と言うそうです)に、きのこの種菌を植えつけて栽培する方法です。
この後実物もお見せしますよ。」 原木栽培とはまったく違うんですね。どんなものか楽しみです♪
【オガ粉運び】
敷地の入口にある「きのこ直売所」のすぐ後ろにたたずむのが、オガ粉の保管場です。
「くぬぎ」と「なら」のオガ粉を、菌種の培養に適した配合にしているそうです。現在は他県産とのことで、ゆくゆくはオガ粉も千葉県産に切り替えて「純千葉県産」を目指しているそうです。千葉県愛がすごいです! 千葉県産食材を愛する若林総料理長も深くうなずいていました。
ローダー(重機)を使って翌日生産分のオガ粉を「仕込み棟」に搬入していきます。
オガ粉はそのままでも発酵と酸化によって発熱してしまうそうです。そんな素材だからこそ菌床栽培にも適しているんですかね。
その粗熱を除去するために、あらかじめ前日に仕込み棟へ搬入しておき、早朝ミキサーで冷ましてからしようするそうです。
【仕込み】
早朝に冷ましておいたオガ粉と数種類の栄養剤を規定量、ミキサーで混入混練します。そして地下水を注入してさらに混練し、全体が適正水分量になるまでこれを繰り返すとのこと。この「適正水分量」は人の感覚で見極める必要があり「神経を研ぎすます瞬間」と仰る大野さんの眼は職人そのものでした。
職人の見極めによりできあがった材料はコンベアーで仕込み機へ充填されます。
コンピューター制御された仕込み機で円筒形の袋に詰められた培地を人の手できれいに整形して、台車へと積み込んでいきます。
営養剤は小麦粉の殻やとうもろこしの皮、ホタテ貝殻などの粉末といった自然にある原材料だそうです。
それぞれ配分次第で「きのこが大きくなるけど収穫量が減る」などの一長一短の特性を試行錯誤することにより、栽培に適した配合にしているそうです。
栽培し終わった培地も粉砕し、農家さんに肥料として使ってもらっているとのことなので、まさにSDGsですね♪
【殺菌】
整形された培地が向かった先にあるのは大きな四角い設備。名前は【殺菌釜(ボイラー)】100℃の高温で約5時間、同時に1,500個もの培地を高温殺菌処理できます。こちらもコンピューター制御で、温度や時間の制御はすべて自動化されているそうです。殺菌処理が終わった培地は殺菌釜の中を通って無菌室に移動します。いよいよ「接種」です!
【接種】
高温殺菌された培地たちは、まず低温に保たれた無菌室で冷却されます。
そして、きのこの菌種を埋め込む接種作業が始まります。この作業もコンピューター制御の機器が行うそうですが、やはり人の手は必須。
そのためにクリーンルームで外部からの雑菌を一切排除した専任の作業員しか無菌室に入れないそうです。もちろん私たちも入れませんでした。当然ですね。(笑)
そして、この接種作業を経たものこそが、はじめて「菌床」と呼べるようになります!
無菌室を迂回して次の作業場へ。そこの小さな小窓からコンベアーで流れてくるしっかりと密封された菌床を、人の手で優しく台車に乗せていきます。
向かう先は「培養棟」です。
接種で一番気を遣うものがやはり「雑菌」!!今までと、これからの過程を含むすべてが無駄になってしまうこともあるので、細心の注意が必要。
冒頭に述べた「納豆」の話はここに掛かってくるんですね。菌を扱う食品や酒蔵などの見学に行く際も、注意したほうが良いかもしれませんね。
【培養】
培養棟に入った私たちの最初の感想は「圧巻」でした。
体育館半面?くらいの施設「ハウス」内にはすべて棚、棚、棚。そしてその棚には一定の間隔で置かれた菌床たち。合わせ鏡のように棚と菌床の列が目の前に広がりました。
ハウス内は外の暑さを忘れさせてくれるような涼しい室温に保たれており、時折、目の前が真っ白になるほどの濃霧に声が出てしまいます。
そんな興奮した私を落ち着かせるように大野さんが説明してくださいました。
「ハウス内はコンピューター制御により温度・湿度を管理していますが、やはり季節や天候の影響を大きく受けます。なので毎日各数値を計測し、調整し続ける必要があります。さらに雑菌の混入やカビの発生等がないかを菌床ひとつひとつ目視で確認します。これを『熟培養』とされる120日~130日間、続ける必要があります。その間、90日・100日・110日とサンプリングし、収穫本・数量・写真などデータ保存した上で、菌床出荷ならびに発生時期を見極めていきます。」
説明されている大野さんの眼は真剣でした。「菌床栽培事業」は菌床そのものが商品であり、その良し悪しが評価に繋がる。日々同じ作業でも菌床ごとに状態は異なり、毎日の積み重ねが菌床ときのこを育てているのだと実感しました。
完熟した菌床を袋から出し、手で適度に叩いてダメージを与えた後に水洗いして、ふたたび棚に並べて直す。この流れを「展開」と呼び、きのこを発生・発育させる工程のひとつだそうです。
「雷が落ちる時、きのこは生える」という言い伝えがありますが、適度な刺激(電気・音圧・衝撃など)を与えることで収穫量や生育速度が増すとされる実験結果もあります。科学によって言い伝えが証明されていくのは「どちらもスゴイ!」ってなりますね。
【就労継続支援事業】
培養棟を出ると外の暑さで真夏に引き戻されてしまいました。そこに通りかかったのは青年の皆さん。「こんにちは!」皆さん笑顔で挨拶してくださいました。ハウス内で作業されている方々もそうですが、皆さん活気があり楽しそうにお仕事をされています。大野さんも説明の際は真剣な趣きでしたが、普通にお話しする時はとても気さくで、皆さんが楽しく和気あいあいと働ける環境なんだな、と感じられました。
就労継続支援とは、さまざまな要因で一般企業での就労が難しい方に、働く機会と支援を提供する障害福祉サービスです。
A型とB型があり、雇用契約や社会保険の有無や給与の算出方法などが異なりますが、利用者が自分のペースで働くことができます。
佼和テクノスさんは菌床栽培の難しい工程をコンピューターによるオートメーション化することで、多くの人を受け入れられる施設となっているそうです。
【今後の展望と意気込み】
若林総料理長と鞠子料理長が仕入れのためのきのこを吟味している傍らで、スタッフの皆さんとお話しさせていただきました。
その女性スタッフさんがこう仰いました。「就労支援サービスの利用者様も私たちも、皆笑顔で分け隔てのなく『やりがいと自信』を持てる職場ですよ。」
最後に今後の展望について大野さんにお聴きしました。
「現在、新たな施設の拡張を進めています。さらに生産規模を増やすことで『純千葉県産』の実現や就労支援サービスの拡充を目指しています。そして菌床製造から出荷まで、日々多くの人が見て、肌感で向き合い異変を逃さず約130日間管理する。地味で地道な作業の積み重ねることにより、はじめて自信をもって選別ができ『菌床』から『椎茸』『きくらげ』さまざまなきのこを皆様にご提供しています。」
皆さん、このお仕事が本当に好きで『やりがいと自信』を持って取り組まれているんだな、と感銘を受けました。
帰り際、お土産になんと「菌床」をいただきました。大きな椎茸がニョキニョキと伸びた立派な「菌床」です。
「今生えている椎茸を収穫しても、再度発生させられるので大切に育ててください。わが子のようなものなので」と仰る大野さんの顔は、わが子を見送るお父さんのような笑顔でした。
お忙しい中、ご案内いただきました佼和テクノスの大野さん、そしてげんきのこのスタッフの皆さん、本当にありがとうございました!
以上
この記事を書いたのは...
広報担当
しほ
ミラマーレで広報を担当しています、しほです。
地域の魅力やSDGsの取り組みを紹介していきます!
趣味はネコとあそぶこととバスケット観戦です。








「株式会社 佼和テクノス」さんは工場設計施工・メンテナンスを行うプラント事業を主軸として、13年前からは介護・福祉事業として
介護・児童放課後デイサービスなど地域に密着したサービスを提供されています。今回の「きのこ菌床栽培事業」もこの福祉事業の一旦も担っているとのことです。